育児は常に自分の子供と一緒にいます。
それは幸せな事でもありますし、時によってはストレスを感じるような大変な時でもあります。
このストレスを溜め続けてしまうと、抑うつ症状が出たりして日常生活に支障が出てしまいます。
しかし、親である以上子育てを避けて通る事は出来ません。
ではどうすればいいのか?
心が辛くならないような対処法を、自分自身に身につければいいのです。
その方法をまとめてみました。
1.辛い事や嫌な事はどんな時に感じるか紙に書き出す。
2.その時の自分の気持ちに点数をつける。
3.心に浮かんだ事を言葉にする。
4.心のつぶやきは事実なのか思い込みなのか検証しよう。
5.出来事をありのままに受け止める。
ちなみに心が辛くなるメカニズムについてはこちらをご参照ください↓
目次
辛い事や嫌な事はどんな時に感じるか紙に書き出す。
私達の頭の中では、常に何かを考えて判断を下しています。
ポジティブな内容からネガティブな内容まで様々です。
「明日は何をして遊ぼうかな?。」という人もいれば「明日は休みだけど、育児が大変で好きな事が何も出来ない。」と様々です。
人は誰でもポジティブな考えやネガティブな考えを持つものです。
ネガティブだからといって、必ずそれが問題であるとは言い切れません。
何が問題なのかは紙に書き出す事で、客観的に物事を捉える事ができます。
まず、この1週間の事を振り返ってみてみましょう。
いいことでも悪いことでもいいので、印象的だった事を思い出して下さい。
思い出しましたか?
では嫌な事、不安に感じた事、落ち込んだ事、自信をなくした事、怒りに満ちたことなどなんでもいいので1つ、紙に描いてみましょう。
それを下のように書き出してみましょう。
・いつ頃?
・どこで?
・何があった?
日にちと場所もしっかり記入しましょう。
何があったが具体的に書くときは、その場面でどのような気持ちを感じたかを具体的に書いて下さい。
例えば
- 「昨日のお昼頃、買い物に行こうとしたが急に心が不安になり、体がだるくなって行きたくなくなった。」
- 「夕方頃、育児で忙しいのに誰も手伝ってくれなくて急に悲しくなってきた、もう辛くてやりたくない。」
- 「子供が中々泣き止まず、自分のしていることが間違っており、親として失格に感じてしまう。」
など、どのような場面でもいいので書いてみましょう。
辛い事を書き出す時のポイント
ストレスを強く感じると、人は身体症状として感じる事があります。
冷や汗や手の震え、動悸、筋肉のこわばりや顔が赤くなるなど様々です。
これは交感神経が亢進状態になる事で、出現しやすくなります。
要は心が落ち着いていない状態です。
これらの症状を感じると、悪循環で更に不安やストレスが増大します。
紙に書き出す時はこれらの身体症状もしっかり書き込みましょう。
その時の自分の気持ちに点数をつける。
辛い出来事を紙に書いてみたら、その時に感じたネガティブな気持ちを書き出します。
心が辛い時は自分の気持ち(感情)を客観的に見る事ができなくなっています。
抱えている問題を解決する最初の一歩は、その辛い気持ちを捉える事が重要です。
ある問題を感じた時に、ネガティブな気持ちを複数感じることもあると思います。
その時は特に強く感じた3つを書き出してみましょう。
ネガティブな気持ちリスト
・憂鬱
・恥ずかしい
・悲しい
・惨め
・不安
・緊張
・パニック
これ以外にもネガティブな気持ちは沢山存在します。
ピックアップした気持ちに点数をつけましょう。
例えば、
出来事:育児に追われて子供の食事やお風呂の時間が遅くなってしまった。
気持ち:惨め 80点 無力感70点
同じ気持ちでも状況によって程度は変わりますが、その時に感じた気分の強さを点数にして下さい。
心に浮かんだ考えを言葉にする。
辛い出来事で嫌な気分になった時、自分はどのような考えが浮かんだか思い出してみましょう。
例えば
育児に追われて子供の食事とお風呂が遅くなり、本来の就寝時間も遅くなってしまった時、
・自分はダメな人間なんだ。
・親として失格なんだ。
このように、ある場面でその瞬間に頭に浮かんでくる考えです。
この考えのことを自動思考と言います。
自動思考はその人の成長の中で受けてきた、様々な経験と解釈の蓄積から形成されていくものです
人は日々の生活の中で様々な事象と、それに対する判断を下しています。
その判断はその人の経験に基づいて、オートマチックに下されます。
簡単ではありますが、これが自動思考というものです。
例えば彼女にメールしたが、全然返事が返ってこない、
「きっと何か別の事をしているから、気づいてないんだろうな。」
と思う人もいれば、
「返事がこない、きっと嫌われているのかな。」
と思う人もいます。
そして自動思考は心が辛くなってくると、誤った判断を下しやすくなります。
それが悪循環となり、やがて日常生活に支障が出てくるのです。
以前、「育児中に心が辛くなる時のメカニズムと対処法。」で認知行動療法について少しだけお話ししましたが、認知行動療法のアプローチの1つとしてこの自動思考に変化を与え、心の辛さを解消していく方法があります。
今お話ししているのは、その自動思考に変化を与える方法についてです。
少し話が逸れました。
辛い出来事で感じた自動思考を思いましたでしょうか?
では次のステップに進んで行きます。
心のつぶやきは事実なのか思い込みなのか検証しよう。
辛い出来事をピックアップし、その時の気分に点数をつけて自動思考も思い出したでしょうか?
ではこの自動思考(辛い時に思い浮かんだ考え)が事実なのか、思い込みなのかを検証するという作業に入ります。
なぜそのような事をするのか?
それは人の頭に浮かぶ考えは、ほとんどが偏っているものです。
プロのカウンセラーでも事実を100%客観的に見ることは難しいことなんですよ。
客観的に物事を判断することは、それだけ難しいという事ですね。
では今まで書いてきた自動思考に、その思考が正しいと言える「根拠」と、その思考が間違いである「反証」を書き出して行きましょう。
根拠より反証が多ければ、その考えは歪んだ考えであるという事になります。
例え:育児に追われて子供の食事とお風呂の時間が遅くなり、本来の就寝時間も遅くなってしまった時、
・いつも失敗ばっかり、自分はダメな人間で親として失格だ。
という自動思考が浮かんだとします。
根拠:その思考が正しいと言える事
・育児でやる事がたまたまその日に集中し、子供のお風呂や夕食が遅くなり、子供の就寝時間が遅くなった。
反証:その思考が間違いと言える事
・この日は確かに遅くなってしまったが、遅くなったのは30分だけだし、毎日ではない。
・育児で予定していた事が遅れるのは、ママ友も結構経験している事だし私だけではない。
・初めての事ばかりで失敗するのは当たり前、以前失敗していたことは最近失敗していない。
結論:根拠より反証の方が多く、その自動思考は事実とは反する。
どうでしょうか?
たったこんな事で?と思う方もいるかもしれませんが、冷静に書き出すことで客観的に物事を判断しやすくなります。
また、反証を考える時のポイントとして、自分の視点だけでなく他人の言動にも注目してみましょう。
以外に褒められる事があるかもしれません。
また、もし友人が同じ悩みで悩んでいたら、自分がどのようなアドバイスをするか考えます。
そうすると反証が意外にも思いつくものです。
出来事をありのままに受け止める。
自動思考に歪みがあるとわかったら、これを修正して行きます。
修正のポイントとしては極端な考えを除き、現実的な考えに修正していきます。
「嫌なことは忘れて前向きに行こう。」などポジティブシンキング過ぎる考えは、現実的ではないため注意が必要です。
これは具体性に欠け、現実から目を背けているだけになります。
現実的な考え方とは
ミスをすることもあれば、人から嫌われることもある。
そのようなマイナス面を認め、プラス面を取り入れて行く事。
では実際に自動思考の歪みをマイナス・プラス面両方を受け入れた、現実的な考えに修正していきます。
例えば
・私は何をしてもうまく出来ない
修正:失敗することもあるが、うまく出来ていることも沢山ある。
・ある人に嫌われてしまった、もうおしまいだ。
修正:全ての人に好かれる事は出来ない、私は1人ではなく友人や家族がいる。
このようにマイナス・プラス面両方を取り入れた考えに修正して受け入れましょう。
修正した考えを思い浮かべ、最初に感じた気持ちの点数が、何点に変化したか記入しましょう。
例えば
自動思考修正前:惨め 80点 無力感70点
自動思考修正後:惨め 50点 無力感30点
このように自動思考を修正し、客観的に物事を見る事ができると、ネガティブな気持ちが軽減されていきます。
しかし、すぐにこの考えを受け入れるのは難しい事です。
でも毎日続けて歪んだ思考を修正していきましょう。
そうすればいつか、修正した考えが自然に思い浮かんでくるようになり、ネガティブな気持ちも少しづつ軽減されていきます。
そして段々と心の辛さがなくなっていきます。
最後に
ここまで認知行動療法に基づいた、気持ちが楽になる方法をまとめてきました。
大切なのは客観的視点で、物事を判断できるようになる事です。
大変かもしれませんが、最初は必ず紙に書き出してください。
方法をまとめてみると
- 紙に辛い出来事を毎日書き出す。(その時でも、その日の夜にまとめて書いても良い)
- その時に感じた気持ちに点数をつける。
- 自動思考(辛い出来事で思い浮かんだ考え)を書き出す。
- その思考が正しいと言える「根拠」とその思考が間違いである「反証」を書き出す。
- 「反証」が多くて自動思考が歪んでいると判断した場合、その考えを修正していく。
- 毎日続ける事で紙に書かなくても、即座に修正された自動思考が思い浮かんでくるようになる。
続ければ自動思考の歪みは修正されていきます。
そうすれば何か嫌な出来事があっても、あなたは冷静に物事を判断する事ができます。
例え辛い出来事があっても、現実として受け止め自分を強くするための糧となるでしょう。