妊婦さんにとって葉酸はとても大事なビタミンです。最近は葉酸サプリメントが沢山販売されています。しかし、意外にも葉酸の正しい摂取量や期間などの知識が、あまり知られていない事も事実です。ここで妊婦さんと葉酸についての正しい知識を紹介していきます。
目次
葉酸の働き
葉酸は水溶性ビタミンの一種です。
主に細胞の分化などに必要な栄養素なんです。
野菜ではほうれん草などに多く含まれており、動物生食品ではレバーに多く含まれていますよ。
葉酸は特に胎児にとって重要な栄養素です。
適量の摂取で、二分脊椎や無脳症で知られている神経管閉鎖障害(Neural Tube Defect;NTD)のリスクを低減する効果があります。
葉酸の不足は神経管閉鎖障害の発生率に関して、最も影響力の強い要因なんです。
しかし、女性が適切な時期に適切な量をしっかり摂取できれば、複数の報告を合わせても50~79%の神経管閉鎖障害の防止効果が確認されています。
ここで知っておいて頂きたいのは100%防げないという事です。
他にも神経管閉鎖障害を引き起こす要因はいくつか存在します。
神経管閉鎖障害を引き起こす可能性のある要因
- 抗てんかん薬の内服
- 母親の糖尿病
- 妊娠初期の高熱発作(インフルエンザ、高温サウナ)
- 患児(神経管閉鎖障害)を妊娠した事がある
これらの要因も神経管閉鎖障害を引き起こす可能性があります。
ただ、何事においても100%はありません。
しかし、葉酸の正しい摂取で少なくとも約半数を予防する事ができます。
妊娠を計画したら葉酸を摂取するように心がけて下さい。
現在、世界各国で妊娠の可能性のある女性に対して、葉酸を摂取するよう推奨されているんです。
日本では2000年に厚生労働省が葉酸摂取に関する情報を提供し、2002年から母子健康手帳にも記載されるようになりました。
ここまでの話でいくと妊婦さんは野菜やレバーを沢山食べれば良い、と思いますよね。
実はバランスの良い食事だけだと、妊娠期に葉酸の必要量を摂取する事ができないのです。
まとめ
- 葉酸は水溶性ビタミンの一種である。
- ほうれん草やレバーなどに多く含まれている。
- 葉酸は妊娠中における神経管閉鎖障害のリスクを低減する効果がある。
- 葉酸サプリメントの使用も推奨されている。
葉酸は2種類存在する
葉酸は食品に含まれている「ポリグルタミン酸型」と、加工食品などに添加されている「モノグルタミン酸型」の2種類が存在します。
ポリグルタミン酸型=食事性葉酸(Folate)
これはプテロイン酸にグルタミン酸が複数結合したものです。
一般的な食事に含まれているこのポリグルタミン酸型は、体内の利用効率は50%とされています。
つまり、食品から葉酸を摂取しても、半分しか体に吸収されません。
400μgの葉酸を摂取しても、吸収されるのは約200μgなんです。
これでは少し効率が悪いですよね。
モノグルタミン酸型(Folic Acid)
プテロイン酸にグルタミン酸が一つ結合したものです。
これらは主にサプリメント等に利用されている事が多いですね。
このモノグルタミン酸は化学的に安定しており、吸収されやすいという特徴を持っています。
葉酸についてはサプリメントの使用も視野に入れた、摂取方法が推奨されているんです。
しかし、葉酸サプリメントは色々な種類の商品が存在している状態。
それ故に、適切な葉酸サプリメントを選ぶ事が難しい状況であるとも言えるんです。
まとめ
- 葉酸はポリグルタミン酸型とモノグルタミン酸型の2種類がある。
- ポリグルタミン酸型は普段の食事から摂取できるが体内の利用効率は50%程度。
- モノグルタミン酸型はサプリメントなどに含まれており、体に吸収されやすい。
- 葉酸サプリメントは沢山あるので、選び方が難しい。
葉酸の摂取目安量
葉酸の摂取量は妊婦・授乳婦で摂取量が違います。
まず一般女性の推奨摂取量は以下の通りです。
18~49歳女性の葉酸推奨量・耐容上限量
・推奨量:18~49歳で240μg
・耐容上限量: 18~29歳で1300μg 30~49歳で1400μg
引用:日本人の食事摂取基準(2010年版)
これ以外にも平成21年国民健康・栄養調査では、20歳以上を対象とした食事による葉酸摂取量の平均が載っています。
男性は日常の食事で平均320μg/日摂取しており、女性は平均304μg/日を摂取しているんです。
つまり、最近では普通の食事で葉酸の推奨量を十分に摂取できることになりますね。
ちなみに耐容上限量とはこの上限値を過ぎて摂取すると、健康障害が起きる可能性がアップしてしまいます。
18~29歳では1300μgとなっていますが、これをグラム数にすると1.3mg。
葉酸の場合、ほうれん草だけで考えると毎日2.5kgを食べ続けることになります。
つまり、普通に食べて入れば過剰摂取にはなりません。
では妊娠を計画している女性、または妊婦・授乳婦では葉酸をどれだけ取ればいいのでしょうか?
- 妊婦(付加量):+240μg
- 授乳婦(付加量):+100μg
- 妊娠を計画または可能性のある女性(付加量):+400μg
引用:日本人の食事摂取基準(2010年版)
ここで付加量とは先ほど書いた推奨量にプラスする葉酸のことです。
例えば妊婦の場合、付加量は+240μgであるため、一般的な女性の推奨量である240μgにプラスします。
つまり、妊婦は1日で480μgの葉酸が必要になりますね。
妊娠を計画または可能性のある女性は+400μgなので、1日に640μgの葉酸を摂取する必要があります。
でも、この量は利用効率が50%である食事性葉酸だけでは、とても足りません。
そこで、利用効率の高い葉酸サプリメントの使用が推奨されているんです。
ちなみに葉酸をサプリメントで摂取する時期についてですが、妊娠1ヶ月以上前から妊娠3ヶ月まで葉酸サプリメントで1日400μg摂取して下さい。
それ以外の時期でも葉酸サプリメントを飲み続ける事は、耐容上限量を超えないので大丈夫だと思いますが、厚生労働省が推奨している時期は妊娠1ヶ月以上前から妊娠3ヶ月までの間になります。
まとめ
- 一般的な女性で推奨される葉酸摂取量は240μg。
- 妊娠を計画または可能性がある女性は1日の推奨量に+400μg。
- 妊婦は1日の推奨量に+240μgで授乳婦は+100μg。
- 妊娠1ヶ月以上前から妊娠3ヶ月までの葉酸サプリメント摂取が推奨されている。
- つまり、妊娠の計画を立てたら葉酸サプリメントを飲み始め、妊娠3ヶ月まで1日400μgの葉酸をサプリメントで摂取し続ける。
葉酸は少な過ぎても多過ぎてもダメな理由
葉酸が不足すると神経管閉鎖障害のリスクが増大する事は、最初にお話ししました。
しかし、それ以外にも色々な障害を引き起こすリスクがあるんです。
葉酸が不足する事は、動脈硬化の危険因子になります。
また造血機能に異常をきたすため、巨赤芽球性貧血、神経障害、腸機能障害を引き起こす可能性があるんです。
ただ、しっかりとバランスの良い食事を摂れていれば問題ないので、安心して下さい。
食事が偏っているのであれば、すぐに修正する必要があります。
特に妊娠の計画を立てる前から偏りの無い食事を心がけて下さいね。
妊娠中に食事が偏っていると指摘、または自分で気づいたらすぐに修正しましょう。
逆に葉酸を大量に摂取(1~10mg)摂取すると、様々な障害が引き起こされる可能性がアップします。
ちなみに1mgは1000μgの事です。
様々な障害とは発熱、蕁麻疹、紅斑、かゆみ、呼吸障害などです。
他にも小腸からの亜鉛の吸収を妨げたり、ビタミンB12欠乏症の診断を困難にする可能性もあるんです。
特に妊娠後期(30~34週)において、1mgの葉酸を摂取し続けていると、摂取していなかった群と比較して小児(平均3.5歳)の時点で喘息になるリスクが1.26倍高いとの報告があります。
何事も適量が一番ですね。
まとめ
- 葉酸はその人にとって必要な量を確認し、適切な量を摂取する事。
- 葉酸を多くとり過ぎても1mgは超えない事。
- ほうれん草を毎日2.5kg食べ続けるような食事をしなければ大丈夫。
最後に
葉酸は人間が生きていくために必要な栄養素です。
特に妊娠を計画している人や妊婦さんにとっては、とても重要な栄養素になります。
しかし、適切な量を適切な時期にしっかり取らないと、ちゃんとした効果は得られません。
最後に重要事項だけまとめますね。
- 一般的に普段の食事で男女共に、葉酸の必要量は摂取できている。
- 女性は妊娠を計画した時点で葉酸サプリメントから1日400μgを摂取し、妊娠3ヶ月まで継続する。
- 葉酸を適切に摂取する事は胎児の神経管閉鎖障害のリスクを低減する。
- 妊娠の計画を立てる前からバランスの良い食事を心がける事。
元気な赤ちゃんを育てるためにも、ママもパパもバランスの良い食事を心がけて下さい。
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