妊活中から妊娠期において必要とされる葉酸。
食事による摂取では足りないので、葉酸サプリメントによる摂取が推奨されています。
しかし、最近では「男性も葉酸サプリメントを飲もう。」という言葉を良く耳にすることも。
今回は、本当に男性でも葉酸サプリメントが必要なのか、調べてみたので紹介します。
葉酸の基本的知識について
まずは葉酸の基本的な知識からです。
葉酸は水溶性ビタミンの一種で、主に細胞の分化などに必要とされる栄養素。
そして、妊活中の女性と妊娠期の女性にとっては、とても重要な栄養素なんです。
理由としては、適切な時期に適量の葉酸を摂取することで、神経管閉鎖障害(Neural Tube Defect:NTD)のリスクを低減する効果があるからです。
このことについては、厚生労働省が葉酸サプリメントの使用を推奨しています。
なぜ、葉酸サプリメントの使用を推奨しているかというと、葉酸には2種類のタイプが存在しているからです。
それはポリグルタミン酸型:食事性葉酸(Folate)とモノグルタミン酸型葉酸(Folic Acid)の2つ。
ポリグルタミン酸型:食事性葉酸(Folate)
- 一般的な食事に含まれている。
- 体内の利用効率は50%で吸収されにくい。
モノグルタミン酸型葉酸(Folic Acid)
- サプリメントの成分として利用されている。
- 科学的に安定しており、吸収されやすい。
一般的な食事では利用効率が50%で効率が悪いです。
ただ、野菜やレバーなど葉酸が豊富な食べ物を食べていれば、一般成人に必要な量は摂取できるため問題ありません。
しかし、妊活中や妊娠期の女性は違います。
葉酸の摂取目安量
日本人の葉酸摂取の推奨量は、18歳以上の男女ともに240μgです。
そして、平成27年国民健康・栄養調査における葉酸の平均摂取量は291.2μgでした。
偏りなく、野菜を食べるように心がけていれば、普段の食事で葉酸の必要量は足ります。
現在は1日に野菜を350g以上、食べるように推奨されています。
しかし、妊活中や妊娠中となると話は違ってくるんです。
妊娠を計画または可能性のある女性は、普段の食事にプラスして400μgの葉酸が必要に。
更に妊婦はプラス240μg、授乳婦はプラス100μg必要になります。
これを食事だけで摂るのは、とても大変。
食事性の葉酸は利用効率も低いし、加熱する事で50%近くが分解、または茹で汁に溶出してしまいます。
そのため、利用効率の良い葉酸サプリメントの摂取が推奨されているのです。
ちなみに、葉酸の耐容上限量は18~29歳で1300μg、30~49歳で1400μg。
ほとんどの場合、普段通りに食べていればこの上限値を超えることはありません。
野菜、特に生のほうれん草100gには葉酸が210μgも含まれています。
まとめ
- 18歳以上の男女における推奨葉酸摂取量は240μg
- 妊娠を計画または可能性がある女性は1日の推奨量プラス400μg
- 妊婦は1日の推奨量プラス240μg、授乳婦はプラス100μg
- 妊娠1ヶ月以上前から妊娠3ヶ月までの間は葉酸サプリメントによる摂取が推奨されている。
- 妊娠の計画を立てたら葉酸サプリメントを飲もう。
更なる詳細についてはこちらを。
男性は葉酸サプリメントが必要なのか?
ここまでは葉酸と葉酸サプリメントにおける、基本的事項について紹介させて頂きました。
さて、ここからが本題です。
最近、男性も葉酸サプリメントの摂取を推奨するという記事を時々見るようになりました。
しかし、先ほどにも紹介したように、しっかりと野菜を食べるよう食事に注意していれば、必要量を摂取できていると思われます。
ところが、葉酸不足で精子の染色体異常を引き起こす確率がアップするという研究が発表されました。
「Folate intake linked to genetic abnormalities in sperm, says new study」
19.March.2008 UC Berkeley Newsより
男性の葉酸サプリメント摂取を推奨している記事にも、この研究が参考文献として載っていました。
この研究の詳細を見てみると、
- 97名の男性が対象
- アンケートでマルチビタミンを含む食物および補助栄養素の平均摂取量を決める
- 精液サンプルはアンケート終了後、1週間以内に摂取
- 葉酸摂取量が多い男性は、中〜低葉酸摂取群の男性と比較して染色体異常の精子の割合が19~20%低かった。
これをみると、男性も葉酸を積極的に摂取した方がいいと思いますよね。
しかし、この研究にも書かれているのですが、この研究段階では葉酸と染色体異常に何かしらの繋がりがあることしかわかっていないのです。
つまり、男性が葉酸摂取量を増やすことで、精子の健康につながるとは言い切れません。
まだまだ研究段階の内容なので、これを完全に鵜呑みにすることは注意が必要です。
研究を進めていく上で、実は他の物質が関係していたとか、副作用が見つかったなど、マイナスな報告も見つかる場合がありますからね。
とは言うものの、内容的にはとても興味を引くものです。
これが事実であれば、精子の染色体異常による影響が低減し、いくつかの症候群になるリスクが減ってきます。
ですが、現段階では男性が葉酸サプリメントを摂取して、現在決められている推奨摂取量よりも多めに摂る理由になりません。
男性は食生活が乱れている?
他にも「男性は仕事が忙しくて食生活が偏りがち、だから葉酸サプリメントを飲もう」と言う言葉も目にします。
確かに偏った食生活を送っていて葉酸が不足し、それを補うために葉酸サプリメントを飲む、というのは辻褄が合います。
しかし、こんな生活をしていたらお金もかかりますし、将来的に生活習慣病などになるリスクも高くなるでしょう。
男性は葉酸サプリメントにお金を使うのではなく、しっかりと食事で葉酸が摂取できるように、普段の食事にお金をかけたり、家族のためにお金を使った方がいいでしょう。
葉酸サプリメントはけっこう金額が高いですからね。
とてももったいなく感じます。
女性の場合は期間が限られていますし、重大な疾患の発生リスクを下げるために必要なので、葉酸サプリメントは必ず摂りましょう。
男性に葉酸サプリメントを勧めない3つの理由
- 科学的根拠に乏しい。
- 購入するための金額が高い。
- 男性の不規則な食生活を助長してしまう可能性も?
最後に
ここまで、男性が葉酸サプリメントの摂取が必要かどうか、について紹介してきました。
個人的な見解としては、現段階では男性の葉酸サプリメント摂取は必要ありません。
まだ、科学的根拠に乏しいですからね。
まずは男女ともにしっかりと、食事から必要量を摂取できるように心がけることです。
そして、妊活を考えた時点で、女性のみ葉酸サプリメントを決められた期間・用量で摂取しましょう。
ただし、今回紹介した研究は、まだまだ期待できる内容です。
今後の進展を楽しみにしていましょう。